転がるイシあたま

医療系の雑談ブログです

9月30日は「交通事故死ゼロを目指す日」

 日本の高度成長期には「年間交通事故死者数が1万人を超える」が常態となっていました。「交通戦争」の時代です。それがやっと1万人を切ったと思ったら、昭和63年からまた1万人を越えるようになって「第二次交通戦争」と呼ばれるようになりました(*1)。

*1)「第1節 戦後50万人を超えた交通事故死者」(平成9年警察白書)

 ただし、「交通事故死」の定義が日本では「交通事故から24時間以内の死亡」となっていて、欧米で一般的な「30日以内の死亡」とは違っているため、国際的な比較をする場合には“補正”をする必要があります(*2)。

*2)「参考-2 欧米諸国の交通事故発生状況」(内閣府)

 このサイトの一番上のグラフ「人口10万人あたりの交通事故死者数(2012年)」は“補正”がされていますが、昭和の時代にはそういったことは公表されずに「24時間以内の死者数」だけがニュースではひとり歩きをしていて、「少しでも数字を小さく見せたいのかな」なんてことを私は思っていました(「1万」でも「9999」でも、死者に関係する人の悲しみや対策は同じだと思うのですが、ニュースでは「また1万を超えた」の方に力点が置かれているように見えていたものですから)。
 やろうと思えば、人工心肺につないで無理矢理呼吸をさせて「今は心肺停止状態だけど死亡はしていません」と時間を稼いで事故から25時間経ったところで「ご臨終です」としたら、警察が発表する統計上の数字としては「交通事故死」にはならないわけです(裁判とか保険とかではきちんと交通事故による死亡として扱ってもらえますから、そちらの方はご安心を)。だけど“それ”がことの本質に迫る態度?

 交通事故死は、というか、交通事故そのものは少ないに越したことはありません。ただ「交通事故死ゼロ」と言われると「交通事故死の定義は?」と聞きたくなるのは、ちょっと疑い深すぎますか?

蛇足)それでも交通事故死を扱う民事裁判は進歩しています。かつては被害者本人が請求しないと慰謝料は請求できなかったそうです。つまり、大怪我だったら請求できるけれど、死んだらそれまで(請求の意志が示せませんから)。それで死ぬ間際に「残念」とか「無念」と言ったらそれを「請求の意志」と解釈して、請求権を家族が“相続”する、という裁判が行われていたそうです(*3)。たしか「残念裁判」とか言っていたはず。それが今では「何も言い残さずに死んだ方が悪い」ではなくて「たとえ事故でも殺した方が悪い」になったのは、社会の「進歩」ですよね?

*3)「慰謝料請求権と相続」(ホントに実在する変な法律)



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大ネタの短篇小説

 医者は「治してナンボ」の存在ですが、同時に「話してナンボ」の存在でもあります。で「話す」対象は、患者さんやご家族、職場のスタッフや同僚医師など、も当然ありますが、もう一つ、学会などでの発表もあります。「会話」は基本的にアドリブですが、「発表」は原稿を作ります。その時私が目安としていたのが「1分間で話す量は、400字詰め原稿用紙で300字分」でした。改行なども含めて普通に書いた「しゃべり原稿」が、たとえば「5分間の発表」だったら4分の15枚、つまり4枚弱分は用意する必要がある、というわけです。で、時間厳守の場合にはこれをぼそぼそ朗読すれば良いのですが、私はなぜかアドリブを入れたくなるものですから、少し少なめに原稿を準備していました。本番は緊張するからリハーサルよりも早口になるので、ますますアドリブのための時間的余裕があるはず、なのですが、なぜか時間をオーバーしてばかりだったのは、本当に不思議でした。
 これが1時間くらいの時間をもらえると、逆に楽でした。1時間ぼそぼそと原稿をそのまま朗読されるのを聞かされる、って、苦痛でしょ? 話す方も苦痛です。だから話のイントロとエンディングはきっちり作っておいて、本体は骨格(あらすじ)だけをきちんと設定したらあとの枝葉はアドリブで何とかしていって、時計を見てちょうど良いタイミングで話の最後に持っていく、とできましたから。
 ところで「1時間話す」と言ったらものすごい言葉の量に思えますが、文字にすると(私の話す速度では)400字詰めの原稿用紙45枚分です。
 これは小説なら短篇小説の長さです。意外に分量がありません。
 だけど落語だったら「大ネタ」と呼ばれる噺になります。
 片や短篇(最小量)、片や大ネタ(最大量)。同じ情報量(文字数)のはずですが、どうしてこう扱いが違うのでしょう?
 もしかしたら、「受けた情報量」ではなくて、読者(聴衆)が「費やした時間」によって「大ネタ」か「短篇小説」かの意識が変わるのでしょうか? それとも「話す」行為は、情報伝達にはあまり向いていない、ということ?

蛇足)ネットでのやり取りはどんどん短くなっていく傾向があるようですが、多くの“読者”にとっては「画面の文字」は「しゃべり原稿」の扱い(“文通”ではなくて、ネットでおしゃべりをしている感覚)なのかもしれません。


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臥薪嘗胆

 今から2500年くらい前、春秋時代の末期頃、「呉」(現在の上海あたりに存在した国)と「越」(呉のさらに南方、当時の「中華」の定義からは「南蛮」扱いの国)とは、犬猿の仲とされていました。そんなに仲が悪くても我慢(あるいは協力)をしなくちゃいけない場合もある、ということで「呉越同舟」という言葉が今に伝えられています。
 あるとき越の王が危篤となり、それを好機とみた呉は越に侵攻しますが、越はそれを見越してきっちり準備をしていたため呉軍は大敗北、呉王は戦傷がもとで死んでいまいました。かわって呉の王となった夫差は越に対する復讐を誓い、時の流れとともにその恨みが薄れることを防ぐために、寝床に薪を敷いて寝ます。これが「臥薪」。
 後年「会稽の会戦」で呉は越に大勝利。かつての恨みを晴らした夫差は自分に自信を持つことができ中原に覇を唱えることを夢見ますが、その背後で恨みを抱いていたのは、呉の虜となった越王勾践(と軍師范蠡)でした。やっと解放されて越に戻った勾践は、恨みを忘れないために、苦いことで有名な「肝(「熊の肝」だそうですが、レバー(肝臓)ではなくて干した胆嚢でしょう)」を毎日嘗めて過ごしました。これが「嘗胆」。もちろん国としては、「呉に従います」という姿勢を見せます。そして、呉が大軍勢を率いて北に向かって守備が手薄になったとき、越が復讐のためにほとんど無防備な背後から襲いかかったのでした。
 現実として、2人の王がそのような行為をしたのかどうか、私には確認はできませんが、少なくともそのように伝えられています(実際にやっていたにしても、それが相手にばれたら「復讐を画策しているぞ」と伝わってしまいますから、秘密裏にやるはず。だから「伝えられている」こと自体がおかしいと言えばおかしいんですけどね)。

 日本で「臥薪嘗胆」が大きく唱えられたのは日清戦争後の三国干渉の時でした。せっかく戦争に勝って得た遼東半島を、“関係ない”列強が口を挟んで清に返却しなくちゃいけなくなったのですが、複数の列強相手ですから“反抗”はできません。悔しいけれど「臥薪嘗胆」と呟きながら、しばらくは隠忍自重を、というわけでした。
 「臥薪嘗胆」は、その時の日本では「恨みを絶対に忘れずに苦しみに耐えて最終的に恨みを晴らす」という意味で使われましたが、「臥薪・嘗胆」とすると「復讐は復讐を呼ぶ」とも読めますね。


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同じ名前で同じ成分の薬なんですけど……

 「死語(76)心不全にβ遮断薬は禁忌」で「かつて心不全には禁忌とされていたβブロッカーが今では保険で使えるようになった」ことを扱いました。厳密にはβブロッカーだけではなくて「αβブロッカー」という種類の薬も心不全に使うことができます(「心臓を楽にする」という原理は共通ですから)。ところが厚労省のやることですから、見事に変なことになっています。

 たとえば心不全に使うことができるβブロッカーに「メインテート(これは商品名で一般名はビソプロロール)、αβブロッカーに「アーチスト」(一般名カルベジロール)という薬剤があります。
 これらの薬を心不全に使う場合にはちょっとコツがありまして、というか、ごく常識的な考え方ですが、最初は微量から始めます。血圧降下を期待する場合には10mg使う、という場合だったら、その1/4の2.5mgあるいはそれよりさらに少ない量から始めて、心機能が抑制されることによる悪い副作用(血圧低下とか徐脈)が出現しないことを確かめます。その上で増やせるものなら少しずつ増量していきます。これを「さじ加減」と言うことが可能です(余談ですが、精神科の場合には、激しい発作に対しては逆に向精神薬を使えるだけ(内科系の立場からはびっくりするくらい)大量に使ってそれから量を減らしていく、という内科とは逆の「さじ加減」もあります)。
 ほとんどの薬は公式に「症状により適宜増減する」ことが許されていますから、こうやって「さじ加減」をするのは医者は当然のことと思っています。もちろん症状が変化しても処方量を変えない場合もありますが、それはなぜかの理由はきちんと説明できます(説明できない場合はヤブ医者の可能性が大です)。

 で、「さじ加減」をやりやすいように、製薬会社も「少ない量の錠剤」を発売してくれました。メインテートだったら、それまで「2.5mg錠」と「5mg錠」だけだったところに「0.625mg錠」が追加されましたし、アーチストはそれまでの「10mg錠」と「20mg錠」に「1.25mg錠」と「2.5mg錠」が追加されました。これで「さじ加減」はやりやすくなったのですが(でないと、それまでの一番小さい錠剤を4分の1に割ったりしないといけなくなります)、問題は「新しい規格の錠剤は心不全にしか使ってはいけない」と厚労省が命令をしたことです。
 たぶん、何が問題かわからない人が多いでしょうね。それまで高血圧などは「2.5と5.0」「10と20」で治療できていたのだから新しい「小さい錠剤」は心不全専用に使うことで何が問題?と思うはずです。

 まずはそれぞれの薬の規格と適応症の関係を見て頂きましょう。

メインテート添付文書
 1ページ右側の「効能効果」の「〈参考〉」の表をご覧下さい。
アーチスト錠添付文書
 1ページ末尾から2ページ冒頭の「効能・効果」の「〈参考〉」の表をご覧下さい。

 メインテートはまだ良いです。パターンが二つだけですから。アーチストは「4つの剤型」「5種類の効能・効果(適応症)」そして「剤型と効能効果の組み合わせが3パターン」というややこしいことになっています(ついでですが、アーチストには、高血圧は1日1回服用だが心不全は1日2回服用、という違いもあります)。
 ここで問題になるのは「さじ加減」です。病院によってはすべての剤型を在庫していない場合があります。また、患者さんによっては「1錠なら飲むが2錠になるのなら飲まない」なんて主張をされる方もおられます。あるいは医者の頭にこれらの表がしっかり記憶されていない場合もあります。で、ややこしいことがいろいろ起きます。
 で、こんな具体例が出現する場合があります。
 高血圧で薬を加減しているが、アレルギーなどでメインテートしか使えない。2.5mgだと血圧が下がりすぎるが、薬をやめると血圧が上昇してしまう。結局1.25mgだったらちょうど良いことがわかった。そこで2.5mg錠を半分に割って出すとそれは患者さんのお気に召さない。そこで0.625mg錠を2錠出したら機嫌良く服用してもらえて血圧も安定した。
 はい、めでたしめでたし、となりそうですが、政府はそれが気に入りません。だって「0.625mg錠は高血圧の適応症を持っていない(保険診療で高血圧に使ってはならない)」のですから。ということで薬を目的外使用する悪徳医者として私が政府に怒られることになります。
 後発品推進運動をしている人の主張は「成分が同じだったらどれも同じ薬」です。で、そういう主張をする人に質問です。「2.5を半分に割った1.25」と「0.625に2をかけた1.25」とで「違う薬」になるのは、どうして? 同じ会社が出している同じ成分で同じ名前の薬なんですが。それとも「成分が同じだったらどれも同じ薬」という主張が大嘘?(嘘つきに「あんたは嘘つきか?」と聞いても意味はないんですけどね)


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早く真犯人が捕まって欲しい

点滴に異物混入 注射器の管理状況を捜査」(NHK)

》4階のナースステーションには点滴とともに注射器も保管されていたということです。

 私から見たら「点滴があるところに注射器もある」のは当たり前なんですが、わざわざニュースで言わなくちゃいけないくらい不自然、ということなんでしょうか。(もし同じ所にないと、薬液を点滴ボトル(またはバッグ)本体に混ぜ込むにしても側注(点滴管の途中から追加)するにしても、一々注射器(と注射針)を別の場所に取りに走らなくちゃいけませんからとっても不便です)

》ナースステーションは施錠などは行われておらず、警察は注射器が異物の混入に使われた可能性があるとみて病院内でなくなった注射器がないかなど、管理状況を調べています。

 日本の病院で「施錠できるナースステーション」は、精神病院以外にどのくらいあるんだろう、と私は思います。というか「内部犯行」だったら施錠してあっても無駄ですよね。
 ところで、「なくなった注射器」って、どうやって調べる気なんでしょう? もしかして注射器に通し番号が振ってあって「○○さんの点滴を作るのに×番の注射器を使った」という記録でも残っていると思っている? いや、それはありません。注射器は「箱」でまとめて購入して使ったらどんどん捨てるものです。それに「なくなった注射器がある」ことがわかっても、それで捜査が進展するとも思えません。
 私だったらまずごみ箱を調べますね。使用済みの注射器を全部集めて、その内容物に「界面活性剤」がある注射器を抽出、それから指紋が検出できたら、容疑者が浮かび上がるはずです。ただし、使用済みの注射器を犯人がポケットに入れて持ち帰っていたり、手袋をはめて操作していたら無駄な捜査、ということになってしまいますが。
 まあ、普通の頭がある警察官だったらこれくらいはすぐ思いつくでしょうから、すでに捜査の輪は縮まっている、と期待します。

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泡立つ点滴

 「界面活性剤」はおそらく日本のどこの家庭にも存在しています。台所用洗剤・石鹸・合成洗剤・シャンプー・クレンジングなどの成分表を見たらたぶんほとんどの製品に「界面活性剤」の文字列を発見できるはずです(たまに「界面活性剤不使用」の製品もあるようですが、それでどうやって洗浄作用を出しているのかは私には説明できません)。界面活性剤は体内にもあります。肺胞の中に存在していて表面張力を落として肺胞の虚脱を防いでいます(これがなくて困る病気が「新生児呼吸窮迫症候群」です)。そうそう、マヨネーズでは卵黄のレシチンが界面活性剤として働いて水(酢)と食用植物油を混ぜています。
 もちろん病院の中にも界面活性剤はあります。しかし……

点滴液“泡立っていた” 袋に穴はなし」(日本テレビ)
 「点滴に神面活性剤」は、明らかに「ミス」ではなくて「悪意に基づく犯罪行為」だと私は思います。いくら「体内」にも存在する、とは言っても、それが血管の中に入れられたら(水と油からできている、と言える)細胞膜が破壊されてしまいますから。で、犯行が一番やりやすいのは内部の人間でしょうし、動機としてはどうせまたとんでもないことを主張するに違いない、というのが私の予想です。
 ただ、この記事を読んだ人に注意を一つ。「点滴に界面活性剤を入れる」→「点滴が泡立つ」は正しい記述ですが、「点滴が泡立つ」→「点滴に界面活性剤が入っている」は必ずしも正しくありません。たとえば「強力ネオミノファーゲンC」や「アルブミン」「免疫グロブリン」も泡立ちやすいことで有名な薬剤です。だから点滴が泡立っているだけでは大騒ぎはしないように。

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昔の血圧測定

 昭和の時代、私が学生の時に習った血圧測定方法は今のとはずいぶん違いました。
 まず使うのは水銀血圧計です。今は電子血圧計全盛ですが、たとえば大災害で停電して電池も切れた状況で、なぜか古い水銀血圧計だけある、となったとき、若い人たちがこれを使えるのかな、なんていらない心配をしてしまいます。
 測定には「作法」がありました。血圧はちょっとしたことで変動しますから、安定させるために測定前にまず5〜10分くらい座ったままで静かに過ごしてもらいます。会話は禁止(お喋りすると、それだけで血圧が変動します)。それから上腕の心臓の高さにマンシェット(空気圧をかけるためのゴム製の袋が入った布)を巻きます。マンシェットには大中小があるので、体格に合わせてマンシェットの巾を選ぶ必要があります。大きな腕に細いマンシェットを巻くと、紐で絞めるのと同じになって血圧が盛大に狂いますから(実際より高く出てしまいます)。ゴムの袋が上腕動脈をきっちり圧迫できるように位置を調整して巻く必要もあります。
 さて、ゴム製の球(ポンプ)をしゅこしゅこ握りしめて加圧ですが、その前にふだんの血圧を聞いておく必要があります。加圧は「収縮期血圧(最高血圧)+30mmHg」くらいまで行いそこからゆっくり(1心拍で2mmHgが目安)減圧してきますが、その収縮期血圧が測定前にはわからないからヒントを本人からもらうわけです(必要以上の無駄な加圧は、患者に苦痛を与え、測定に無駄な時間がかかります)。私は測定直前に手首の動脈の触診をして自分の指先の感触で収縮期血圧の大体の見当をつけていました。ここをさぼって適当に加圧すると、絞めすぎて患者に不要な痛みを与えたり加圧不足で減圧を始めてからあわてて再加圧という無様なことになります。
 めでたく測定が終了したらマンシェットを外して記録ですが、このとき「偶数」で記録する必要がありました。水銀血圧計の目盛りは「2」刻みですから読み取った目盛りで「142/86」とか上も下も偶数で書くわけです。ずっとそれでやってきたのですが、今世紀になって広がった電子血圧計はその点をまったく気にせずに「141/87」とか奇数表示も平気でしてくれるので、最初はちょっと変な気分でした。
 ただ電子式は加圧はボタン一つで自動的にやってくれるし最近のは数字もそのまま電子カルテに飛ばしてくれるので楽で良いのですが、自分が「人間の血圧を測定している」のか「血圧測定器を操作している」のかわからなくなることがあります。「作法」ではなくて「マニュアル」で動いているものですから。


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iPSとかGSIとかNotchとか

iPS由来細胞のがん化、予防法を開発 慶応大チーム」(gooニュース/朝日新聞)
 この記事では「iPS細胞の癌化を予防することでiPS細胞治療の安全性が高まった」というニュアンスになっていますが、元記事の朝日新聞ではちょっと違っています。

iPS由来細胞のがん化、予防法を開発 慶応大チーム」(朝日新聞)
 gooの画面では省略されている最終段落にこうあります。
》岡野教授は「がん化というiPS細胞治療の課題を克服できる可能性がある。実験で確認した仕組みは他の組織の細胞にも関わっており、様々な組織の移植治療の安全性向上につながる」と話す。

 「iPS細胞治療の安全性が高まる」だけではなくて「様々な組織の移植治療の安全性向上」、つまり「iPSに限定しない可能性」が重要、ということです。ただ、それがなぜかは新聞記事を読むだけではわかりません。

 そもそも「「GSI」という薬」って何だ?ということでちょっとネット検索をかけてみました。一番詳しそうな論文はなぜか「404」になっていたのが残念。ただ、こんな記事がありました。

AesはNotchシグナルを阻害して大腸がん転移を抑制する」(京都大学)
 Aes (Amino-terminal enhancer of split) はNotchシグナルを阻害する。Aesの発現が低下すると癌細胞のNotchシグナルが活性化され、癌の悪性化が進行する。また、Aesの発現が低下すると癌の転移が起きやすくなる。そこで「Notchシグナルを阻害する薬剤」を投与したら、マウスで癌の悪性化が抑制された。

 ……なんだか暗号で呪文を唱えられているような気分になるかもしれませんが、単純に言えば「癌の悪性化を防ぐ遺伝子がある。その遺伝子の働きと同じ効果が得られる『Notchシグナルを阻害する薬剤』を投与したら癌の進展が予防できた」ということです。
 で、この記事はマウスの大腸癌(と肝転移)の話ですが、冒頭のiPS細胞の癌化予防の記事で使われた「GSI(Gamma secretase inhibitor)」という薬はまさに「Notchシグナルを阻害する薬剤」なんです。
 ということで、今回の慶應大学の発表は「iPS細胞による治療」だけではなくて「人間の癌全般の治療」につながるかもしれない話、ということになります。遺伝子レベルをいじくるので「治療による副作用」もこれからいろいろわかるだろうと私は予想していますが、なんとか安全な方法が見つかると、癌治療や移植、あるいは免疫系統の病気の治療に関して「明るい未来」が見えてくるかもしれません。


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文字通り(3-18)「秘」

「特定秘密」……後ろ暗い人間たちあるいは権力者のアイデンティティー
「秘密警察」……秘密を扱う警察
「秘すれば花」……のぞき見の美学
「便秘」……秘められた便
「秘伝」……伝えたらすでに秘密ではない
「神秘」……神が持つ秘密
「秘湯」……その割には人に知られている
「マル秘」……丸い秘密
「守秘義務」……きちんと守る人間には説明する必要がなく、守らない人間には説明しても意味がない義務
「黙秘」……沈黙することと秘密を隠していることとの混同(単に言うことがない場合もある)
「秘書」……秘密の書類、またはその書類を隠す係
「秘戯」……秘所と秘部で遊ぶこと
「秘密」……どちらの字にも「心」が隠れている(ついでに「隠」にも)


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税金の無駄遣い

 オリンピック選手に対して「税金で派遣されたのに、メダルが取れないとは何だ。国民に謝罪しろ」と言う人がいました。
 ところで「もんじゅ」は1兆円もの税金を使ったそうですね。

もんじゅ廃炉方針 「30年協力してきたのに」地元・敦賀は困惑」(YAHOO!ニュース/産経新聞)

 オリンピック選手にあれだけ居丈高になっていた人は、このニュースに関しても「税金」「成果が出ない」「謝罪」という文脈で同じ反応をするんですよね? それとも運動選手個人にはものを言えても、国に対してはものが言えないタイプかな?

 ちなみに私は誰かに謝罪させることには興味がありません。私が興味があるのは「一兆円で何か“成果”は得られなかったのか」ということと、もう一つ「“得”をした人は誰でどのくらいの“利益”を得たのか」です。たとえば、水増し請求・賄賂・謝礼・リベート・バックペイ・便宜などが「1兆円」のうち何%か(あるいは何割か)あると思うんですよね。それはどのくらいでどこに最終的に流れたのか、とっても興味があります。

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