転がるイシあたま

医療系の雑談ブログです

真綿で首を絞める

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 被災地域の医療機関の苦闘に関して、いくつかCBニュースを集めてみました。

休止中の被災病院、診療報酬ストップの懸念- 雇用継続が課題」(4月6日)
被災3県の医療施設、廃止44、休止29- 未届けの休止状態は175施設」(6月10日)
原発周辺の病院、職員の退職増加- 「損害賠償の早期仮払いを」」(7月20日)
原発事故で来年度の新人看護職確保は困難- 福島県看護協会」(8月5日)
避難区域解除も病院は「見通し立たず」- スタッフ流出、患者の減少、資金難」(8月11日)

 タイトルを読んだだけでも、いろんなことが読み取れます。でも、できたら記事の中身もそしてその関連記事ももし余裕があったら読んでみてください。
 「やる気がないのだったらさっさとやめればいいんだ。やる気のある病院だけ残ればいいんだよ」という罵声がどこかから聞えてきそうな気がしますが、実はそれは“簡単な解決法”ではありません(それで“解決”するのだったら、みなそうしていますって)。責任感とか使命感とかもあるでしょうが、もっと下世話な……たとえば「退職金」。まともに払えないんですよ。だから良心的な人ほど病院を閉めることができない。

第1原発事故、医療法人にも損害賠償仮払い- 東電が最大250万円 」(7月29日)
 で「支払いまっせ」の記事がこれですが、「3月12日から5月末までの収支差額を過去の実績を基に算出し、その半額を支払う。ただ、250万円の上限額を設定している」のだそうです。私個人が250万円もらえたら、それは嬉しいですが、中小企業で250万円……何に足ります?  給料?退職金?薬などの購入費?  あ、電気代にだったら十分かな。

 日本のどこかで「この際、被災地域の医療機関は“再編(破壊と創造)”をしよう」という決定が下されたのかもしれません。でもそれだったら、ちゃんと「グランド・デザイン」を提示してもらいたいものですが……


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文字通り(2-14)「枯」

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「夏枯れ」……夏が枯れてしまった
「枯れ薄」……夏はどこにいるんだろう?
「枯渇」……枯れたら渇く
「枯れ木も山の賑わい」……員数だけは合っている
「枯れ木に花」……実は枯れていなかっただけ
「枯葉剤」……枯れ葉を製造するための薬剤
「立ち枯れ」……倒れることさえ許されない
「枯れ枝」……対義語は濡れ枝
「枯死」……植物のミイラ
「枯れ節」……鰹のミイラ


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東西東西

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 「フランスはパリのセーヌ川右岸」なんて文章に出会うと、行ったことがなくてもある種のあこがれをもって私はその文章を読んでしまいます。ただ、この手の文章を初めて読んだときの私の感想は「右岸って、どっち?」。
 もちろん辞書で調べたらすぐにわかります。小舟を河に浮かべて川の流れに従って下っていきます。進行方向(下流)を向くポジションを取って見渡せば、右側が右岸、左側が左岸、です。ひねくれ者は上流を向いて「こっちが右岸だ」と言いたいかもしれませんが、それは世間では認めてもらえません。
 こういった“相対的”な決め方ではなくて、もう少し“絶対的”な呼び方、たとえば「西岸・東岸」なんてのはどうか、なんて私は思います。これがたとえば南から北へほぼ“一直線”に流れるナイル川だったら良いのですが、川がやたらと湾曲したら困りますね。さっきまでの東岸がしばらく下ったらぐるっと曲がって西岸になるのですから。
 さて、「ナイル・東西」と来たらやはり「西ナイル熱」を連想しなければならないでしょう。これは「ナイル川の西岸で発見された熱病」ではありません。右岸だ、もとい、ウガンダの西ナイル地方で1937年に最初に分離されたウイルスによる病気です。私は「日本脳炎のような病気」と理解して覚えています。今はアメリカで流行していて困ったことになっているようですが、そのうち蚊が飛行機にでもまぎれ込んで日本にもやってくることでしょう。地球をぐるりと回って「西」の熱が東からやって来る……グローバル化の時代ですねえ。


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生レバーも禁止の方向で

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 院内感染対策では、個々の病原体一つ一つに「禁止」を言うのではなくて、まず「スタンダード・プリコーション(標準対応策)」で対応してそれでは足りない部分には特別に対応策を追加します。典型的なのがたとえばノロウイルスでしょう。たとえば、消毒薬が標準のものでは力不足だから、次亜塩素酸ナトリウムを使用する、と。ここで大切なのは「基礎的な部分(日常的な対応)に関しては標準予防策で」「特殊な部分に対しては個別の対応で」の原則が確立しているかどうか、です。「個別の対応」はその「原則」の上に立てた方が、無駄も事故も少なくなります。

 ところで厚生労働省の部会で「生レバー販売禁止案」が提案されたそうです。
生レバー販売禁止案、厚労省の部会で提案」(日テレNEWS)
これは議論が楽な方向(とりあえず方面)に走っているだけに私には見えます。「何か問題がある」→「とりあえず禁止」としておけば「解決」のわけですから。何より「対策」のためにお金もかからず汗もかかずにすむ。エアコンの効いた部屋で口だけ動かしていればいい。
 私自身は焼肉屋でレバ刺しは食べないから焼肉屋で販売禁止になっても痛くも痒くもありませんが、だからといって国の施策を楽して決めよう、という態度に賛成もしたくありません。ここで大切なのは、院内感染対策と同様、「一般原則」と「個別の対応」です。食品が安全であるように/調理場が安全な環境であるように、基準を定める。その基準が守られているかどうかの検証を地道に行なう。その基準を特殊な病原体または特殊な食品が突破するようなら、まず基準を見直す。見直した基準が有効かどうか検証する。それも無効なら、その「特殊性」に合わせた個別の対応策を検討する。
 そういった努力をせずに「問題がある。禁止だ」と言うだけでことを収めようとするのは、書類をいじくるだけで満足して現実にきちんと向き合おうとしない態度に私には見えます。私はアメリカの禁酒法のことを思い出しています。『アスピリン・エイジ』では「禁酒法自体がこっけいなものだった」と酷評されていますが、そのこっけいな禁酒法が生みだしたのは大量の密造酒とヤミ酒場でした。生レバーや生ユッケに酒ほどの強い需要があるかどうかは知りませんが、単に「禁止」と言うだけで知らんぷりをしていたら、へたすると生レバーがヤミに入ってしまうかもしれませんよ。


参考図書:『アスピリン・エイジ 1919-1941』イザベル・レイトン 編、木下秀夫 訳、 早川書房、1971年、1800円


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